• 聖武天皇が願った平和の国のために

    「国分寺(こくぶんじ)」の目の前に立ったあなたは、もしかすると「ここは奈良?」と錯覚するかもしれません。国分寺が建つ境内の雰囲気は、まるで飛鳥大仏のある飛鳥寺のようで、「海のある奈良」であることを思わずにはいられません。

    「国分寺」の名前を聞いて、すぐにわかった人は歴史によく通じている人でしょう。国分寺とは、聖武天皇(しょうむてんのう)が仏教の力によって国を守るために、天平13年(741年)にそれぞれの国に寺院を建てることを命じたもので、国分僧寺(こくぶんそうじ)と国分尼寺(こくぶんにじ)の二種類があります。全国に50ヶ所近くの国分寺が現存していますが、そのほとんどが国の指定を受けています。
    • 正面から見る国分寺
  • 子どもから大人まで。町に守られる大仏さま

    小浜の国分寺は「若狭国分寺」とも呼ばれ、現在の本堂である「釈迦堂」は宝永2年(1705年)の江戸時代に再建したもの。シンプルで堂々としたお堂の中に入っていくと、さらに迫力を持って迫る木造の釈迦如来坐像が。その大きさは3mにも及ぶ大仏さまで福井県では最大を誇り、別名「釈迦丈六」とも呼ばれています。丈六とは、背丈が一丈六尺=約5mという意味で、座っている座像になるとその半分ほどの大きさになります。

    寄木造りで、右手に施無畏(せむい)、左手に与願(よがん)の「印」(両手の指で形を取り仏像の内証を示したもの)を結んでいます。施無畏は掌を正面に向けて指を伸ばし恐怖を取り除くもの、与願は掌を上に向けて手前に差し出して仏が人々の願いをかなえてくれることを表しています。この二つの印は対になることが多く、主に釈迦仏に見られます。

    釈迦仏の後背には7体の「化仏(けぶつ)」が付随しており、よく見るとそれぞれに異なる印を結んでいます。これは東大寺の大仏さまにも見られるもので、釈迦如来の分身とされ、異なる働きをしながら衆生を救うために姿を変えて現れたものといわれています。

    この大仏さまの素晴らしさは、祈る人々との心の近さにあります。この町の子どもたちは釈迦堂が格好の遊び場になっており、御住職も小さな頃からこの大仏さまの近くで遊んでいたそう。地元の子どもたちによる国分文化財愛護少年団では、清掃奉仕なども行うことで、大仏さまがいる空間を守り続ける心が育まれています。
    • 高さが3mある釈迦如来坐像
    • 釈迦仏の後背の「化仏」
  • シンプルで力強い薬師如来像

    釈迦堂の左手にある「薬師堂」には、春日仏師作と伝えられる鎌倉時代の薬師如来坐像がお祀りされています。装飾のない素地仏のため、木彫による流線の美しさや木肌の素朴さ、簡素な中にもどっしりとした力強さを感じられるお薬師さまです。

    薬師如来像の左右には、同じく鎌倉時代の如来像が坐しています。左に釈迦如来、右に阿弥陀如来と、本来ならば本尊として祀られていてもおかしくはない如来像です。これは他の寺にあった本尊が、廃寺の際にこちらに移ったのではないかと伝えられています。小浜の寺院はこういった本尊の移動による保護がたいへん多く見受けられ、どの時代にあっても地域の人々によって丁寧に守られてきた、その心を受け継いでいることを示しています。
    • 釈迦堂の左手にある「薬師堂」
    • 鎌倉時代の薬師如来坐像
  • 古代の歴史を感じる国分寺跡と巨大な古墳

    境内の外れには、発掘された若狭国分寺の史跡があり、南大門・中門・金堂・講堂などの跡に実際に触れることができます。北川、遠敷川、松永川という河川に囲まれている立地からも非常に重要な場所であったことが伺えます。

    また、隣接した若狭姫神社は元々古墳であり、6世紀頃の円墳としてもその規模は直径約50mほどとかなり大きなもの。このように国分寺の近くに古墳が隣接することは全国的にも珍しいといわれています。なぜ若狭姫神社なのか?古墳が近くにあるのか?を考えながら、古代の不思議に想いを馳せるのも楽しい時間です。

    釈迦堂のまわりを散策してみると蓮の花が密集する畑があり、どことなくお釈迦さまとの世界と地続きであるような気持ちになります。仏像だけでなく、こうして寺院のまわりも含めて風を感じながら歴史に触れるのも良いでしょう。
    • 蓮畑から見る国分寺

仏像

若狭国分寺跡

  • 国指定史跡
  • 南大門・中門・金堂・講堂・塔などの遺構

木造釈迦如来坐像

  • 市指定文化財
  • 本像の軀部は鎌倉時代、頭部は江戸時代
  • 像高 318cm

木造釈迦如来坐像

  • 市指定文化財
  • 平安時代初期
  • 像高 85.7cm

木造阿弥陀如来坐像

  • 市指定文化財
  • 平安時代初期
  • 像高 165.4cm

ご拝観・交通のご案内

名称 国分寺 (こくぶんじ)
山号 護国山
電話番号 0770-56-2519
拝観時間 9:00-17:00
拝観料 400円
駐車場 20台