• 小浜藩を支える祈願寺

    小浜湾と北川・南川という囲まれた「小浜城」は、四方を水で守る水城でした。関ヶ原の合戦後、若狭国の主となった京極高次(きょうごくたかつぐ)がこの城を築城に取り掛かり、その後、小浜藩初代藩主となる酒井忠勝(さかいただかつ)によって完成を迎えました。

    その小浜城から南東へ向かって車で10分ほどのところに、小浜城主である京極高次、酒井家の祈願寺である「萬徳寺」があります。元々、山麓の音無川岸辺にあった極楽寺が火災に遭い、江戸時代の初めに現在の場所に移築され、萬徳寺として改称されたと伝えられています。

    萬徳寺に入れば、罪人をも助けてくれるという若狭国の「駆け込み寺」として知られ、雄大で穏やかな境内にいると心なしかその包まれる優しさに触れるような気がしてきます。
    • 階段から見る庭園と書院造の建物
  • 武家の文化を伝える庭園と本堂

    萬徳寺の見所は、なんといっても庭園です。山門をくぐると正面すぐに広がる圧倒的な庭園は、山の斜面を利用した「埋石式山水庭園」で、その面積は約1,800㎡と言われています。手前に敷き詰められた白砂利、その向こうにはよく剪定された木々が植わり、中心部に高さ約2.2mの本尊石が見られます。

    また、それを取り囲むように大小約200本のモミジの木が植わり、白・緑・赤・黄と色鮮やかに映える壮観な景色は「日本紅葉百選」にも選ばれています。他にも、5〜6月にはツツジも有名で、季節ごとに参拝者の目を楽しませてくれます。

    中央の石段を上がると、山門前の山脈に対峙するように建つ本堂があります。枝垂れかかる大きなモミジの木をくぐると、「舞良戸(まいらど)」と呼ばれる細かい横桟が組まれた扉によって守られる武家の寺らしい堂々とした正面が見えてきます。
    • 座敷から見る埋石式山水庭園
    • 階段にかかる紅葉と本堂
  • 心穏やかに通い続けた酒井家の祈り

    本堂の中に入ると、比較的新しい須弥壇の上に本尊である阿弥陀如来坐像が安置されています。元々の極楽寺の本尊が、そのまま移築と一緒にこの地に運ばれました。

    平安後期の作と言われる阿弥陀如来坐像はヒノキ材の寄木造で、「上品下生」の来迎印(らいごういん)を結んでいます。長方形の裳懸座(もかけざ)の上に座する阿弥陀如来の表情は、とても穏やかで心を落ち着かせる優しい雰囲気を持っています。

    平安時代から江戸時代と移り来た阿弥陀如来に、まだ国の外では戦の面影の拭えない小浜藩の人々は、どのような気持ちでこの前に座ったのでしょうか。血生臭い戦からは比較的離れた小浜の土地で伝え聞く物事に、さまざまな思いで祈り続けていたのかもしれません。

    庭園横の座敷には、酒井家のお殿様が休むための床の間のほか、酒井忠貴が描いたとされる欄間の水墨画などが残され、この場所に通われていた名残を感じることができます。また、重要文化財である不動明王三童子像、弥勒菩薩像の掛け軸なども貴重なものとしてよく保存されています。
    • 阿弥陀如来坐像
    • 座敷にかかる弥勒菩薩像の掛け軸
    • 酒井忠貴が描いたとされる水墨画

仏像

木造阿弥陀如来坐像

  • 重要文化財
  • 平安初期

絹本著色弥勒菩薩図像

  • 重要文化財
  • 鎌倉時代

不動明王三童子像

  • 重要文化財
  • 絹本著色
  • 鎌倉時代初期

ご拝観・交通のご案内

名称 萬徳寺 (まんとくじ)
山号 延宝山
電話番号 0770-56-2308
拝観時間 8:30~17:00
拝観料 400円
駐車場 20台