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宇宙を感じる大日如来
元々、大日山堂谷に真言宗の寺院として建立された遠松寺が、南川の大洪水によってのちの文安元年(1444年)に尾崎地区のこの地に移されたことが圓照寺の始まりです。この時、真言宗から臨済宗に改められました。圓照寺のこじんまりとした山門に向かって石段を上がると、右手に大日堂が見えてきます。
御住職に大日堂の扉を開けてもらうと、眼前に光り輝く大日如来の巨大な坐像が姿を現します。春日大社の信託によって彫り出された大日如来を、奈良の三笠山から遠松寺に運んで来られたのがこの御本尊とされています。
大日如来坐像の高さは251.5cmという大きなもので、12世紀初期の作と言われています。両肩がしっかりと張った逆三角形型の迫力あるフォルムで、引き締まったお椀型の頭部はチベットなどの東南アジアの仏像を思わせるような表情をしています。また、後年に施された金が輝きを放ち、まるで宇宙の存在を感じるようです。 -
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不動明王と目を合わせて
須弥壇の中央に安置された大日如来の左手に立つのは不動明王です。華々しい大日如来とは趣が異なり、凛とした恐ろしさを讃えています。高さ158.7㎝のヒノキの寄木造で等身大の像ですから、少し正面から右にずれて明王様の目に自分の視線を合わせてみましょう。明王様の黒目が上と下に向いていることに気づくはずです。これは、平安時代によく見られる表現で、「天地眼」と言われています。
ぐっと引き締まった全身と、流麗でありながら力強さを含む衣を纏いながら、一歩こちらに踏み出して、まるで明王様がこちらに歩いて来られるようなリアルさを感じるのではないでしょうか。 -
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自然と一体化する庭園で
大日堂から奥の方へ進むと、山裾の広がりに合わせて、苔むした庭が見えてきます。時間が合えば、その庭に面して建てられた茶室からこの庭を眺めると、先ほどの大日如来で感じたものよりもう少し小さな宇宙が感じられるでしょう。
圓照寺の庭園は、斜面の上の方には三尊石組があり、中心に澄んだ泉をたたえる座観式林泉庭園です。モリアオガエルが生息していることでも知られ、大小のツツジが季節になると目を楽しませてくれます。
据えられた岩は鉄分を含む褐色のもので、雨で赤みが増し、しっとりとした雰囲気の中でいつもとは違う表情を見せてくれます。茶室の前に座り、一度心静かに手を広げてみると、その自然と一体になれるようです。 -
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